Cascade Mountain
 バンフの山といえばこの山である。バンフ大通りはこの山がきれいに見えるように設計されていると言い切っても過言ではない。

 これはもう滑るしかない!これを見ている人に、その理由を聞く人はいないはずだ。

 
 標高2998メートル。バンフを代表する山である。バンフを紹介するガイドブックを広げれば、必ず上にある風景に出くわすはずである。
 96年バンフに到着した日から、待ちわびていた日がとうとうやってきた。バンフに来た当時は、滑りたいシュートはたくさんあるが、どうやってその頂上に行けばいいのか分からなかった。

 時は熟して2002年4月。ついに目をつけたシュートをやっつける時が来た。大雪、天候、仲間、クライミング技術・・・全ての条件はそろった。JUST DO IT!

 
 酔っ払いがまだ、町を徘徊する、夜中の2時に山の麓に集まる。車にはギアが満載だ。真っ暗闇の中、準備をする。忘れ物が無いか心配だ。忘れ物は時に致命的な失敗を招く。時には生死にかかわることも・・・。そういえば以前、スノーボードブーツを忘れた事があったのを思い出す。(その時は泣く泣くナイキのスニーカーで滑った)今日は大丈夫。入念なチェックをしたはずだ。

 取り付きに行くには、ハイウェイに張ってる網を越えないといけない。動物がハイウェイに入ってこない為のものだが、こいつがやけに高い!乗り越えるのに苦労する。

 真っ暗闇をひたすら取り付きまで歩く。本当に真っ暗だ!空を見上げると、なんとオーロラが!これは歓迎か?それとも山の怒りか?オーロラが不気味に揺らめいていた。(時間が無かったので写真はありません)

 取り付きからは、とにかく登り。雪は硬くしまり、スノーシューは要らない。クランポンを付け、一歩一歩踏み出す。2時間ほど登るとバンフの町全体が見下ろせた。そして遠くは隣町まで。バンフの町があるボウバレーは以外に明るい。オレンジ色の街灯が華やかだった。

 5時ごろから明るくなり始め、登ってきた斜面を見下ろす。イヤーずいぶん登ったもんだ!

 
 気が付けば、転んだらただではすまない白い斜面にいることに気が付いた。所々、凍りついた滝になったパートなどをフロントポインティングで登らなければならなかった。本当に滑り降りる事が出来るかどうか、怪しい場所もあった。

 所々、大きな岩が行く手に現れる。右に行けばいいのか、それとも左か?まるでアミダクジ。全体を写真にとって引き伸ばしたものを参考にルートを決める。時には喧嘩寸前まで・・・。みんな遊びなのに真剣である。まあ、遊びだから、真剣なのだ。仕事だったら、こんなに真剣にはならない

 西から、怪しい雲がやってきた。今までは星が見えるほどの晴天だったのに。やはり朝のオーロラは山の怒りだったのだろうか?しばらくすると僕らは深い霧に閉じ込められた。

 突然霧が晴れ、目の前に岩の無い大きな一枚バーンが現れた。胸元から取り出した山全体の写真をチェックすると、このバーンを越えれば頂上が近いのは間違いない。登り始めて、6時間ほど経っている。

 
 

 この斜面は今までに無いぐらい急だった。ロープをするかどうか悩んだが、結局そのまま登りつづける。雪はとにかく硬い。慎重にステップを刻む。

 僕らの行く手を大きな岩が遮った。この上が頂上なのは明らかだ。岩を迂回し、頂上へ・・・

 頂上は霧の中だった。強い風が吹き付けている。夏にこの山に登ったことがあるが、夏の面影は全く無かった。ただ、狭い雪原が広がっていた。僕らが身に付けているもの、全てが凍りついた。

 

そして、ディセント・・・
 地上に無線を入れる。

「今、頂上。下から見て。今後晴れるかどうか教えてくれ。」

 地上には、打ち合わせどおり、Dimension6、の面々がビデオをとるために待機していてくれた。

「しばらくすると、青空が来るかも知れない。」

 僕らは彼らの情報をもとに滑り出す機会を待った。

 そして、ディセント・・・

(上の写真はカザ)

 
 写真を見てもらえば分かるが、斜度が半端ではない。最大斜度は60度ぐらい。しかし、あくまで最大、平均斜度は40度ぐらいだと思う。それでもおっかねーのには変わりはない。

 雪質はサン・クラスト。とにかく硬い。最大のテーマは「転ばないこと」転んだら。間違いなく死にそうだ。ターン一回一回が命がけだ。横滑りで、安全なところまで逃げるのは簡単だ。しかし、ミミズが這ったような、トラックを残すのは恥以外の何者でもない。ターンが出来ないぐらいだったら、歩いて降りたほうがましだ!

 僕らはスノーボーダーである。登山家ではない。登山と違うところは、ビレイされている感覚が全く無いこと。ミスをしたら滑落が待ち受けている。

 硬い雪が、スノーボードのエッジをガンガンたたく。その振動を何とか止めたところで次のターンに向かって雪面を蹴る。ビデオの世界とは全く違う、僕らの世界。地味だが、緊張感はヤバすぎ。

 地上に着く。やっと両足で地面が踏めるようになると、雪がなくなってきた。取り付きにつくとDimension6のシャンパンの歓迎が待っていた。無事に町に帰還。ありがとう!

text by kenji inageda

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