LE CORRIDOR 2
TEXT BY KENJI INAGEDA
 バンフから程近いサンシャインスキー場からの帰り道。いつも気になるシュートがあった。
 マウント・コーリーと呼ばれる、この山に真っ直ぐ伸びるシュートを滑ろうと決心したのが96年、そして実行したのが99年の春。その時は雪崩に遭って九死に一生を得た。
 このシュートを見つけたのが96年の冬。失敗ながらもアタックしたのが99年。そして、今回の再チャレンジが2002である。
 一体どうしてこんなに時間がかかるのか?答えはロッキーの降雪量にある。バンフの標高が約1400メートル。なかなかの高所ながら、大きな北米の内陸に位置する為。雪が積もることは少ない積もってもせいぜい50センチがいいところだろう。
 そして、このシュートの一番下はバンフと標高がそれほど変わらない。つまり、このシュートのてっぺんからボトムまでスノーボードが出来るほど雪がしっかり詰まるということが稀なのである。
 2001年シーズンの積雪は燦々たるものだった。レイクルイーズを例に取れば、通常、シーズンを通し4メートル程ある積雪は3メートルにも満たなかった。当然このシュートに十分な雪が付く事は無く。夏を迎えることになってしまった。
 2002シーズンはスタートから好調だった。リゾートがオープンしてからというもの、まだ、人影もまばらなこともあり、僕達は毎日パウダーを楽しんだ。このシーズンは何か期待できそうな予感がした。

 シーズンも半ばに入り、1月も終わりを告げようという頃、バンフにまとまった降雪があった。今年の雪の特徴としては暖かくなるとドカンとまとまって降り、その後冷え込むというのが特徴であった。
 バンフに降った雪は重く、湿っていた。こういった雪が続いた後には風で雪が飛ばさせることも無く。安定を見せる。カザ、アツシ、そして僕「シューターズ」は早速LE CORRIDORをチェックしに車を西に走らせた。

 
 ハイウェイを離れ、マウント・コーリーを取り囲むように走る道路に入り、ほんの数十分走った所に車をとめる。車からシュートは見えないが、何度も確認しているので間違いない。
 それぞれ準備を整え、出発する。道路から、シュートに向かって登り始めると、まもなく山火事の痕にでる。山火事によって倒木をよけていくのがわずらわしい。まるでアミダクジだ。
 苦労して倒木地帯を登ってくと。肝心のシュートが目の前に迫ってきた。シュートの先にはアバランチデブリが見える。
 1時間ほどでシュートの入口に到着。ここは2回目だが、上を見上げてその長さに改めて驚かされる。
 両側は10メートルを越える。クリフである。その細い通路の広さは約5メートル。思ったよりも広い。
 雪は、思ったより少なかった。スノーボードブーツの底に時々岩が当たる。しかし、ボトムでこれだけ雪があれば、上の方は何とか滑れるだろう。
 
 今日の天気ははっきりしない曇り空だった。温度も安定し、アバランチ・インフォメーションの予報もいい感じだ。どうやら登らない理由はなさそうだ。僕らは先頭を交代しながら、進んでいった。
 途中から、アツシが遅れ始めた。そう言えば、ブーツの具合が悪いと、出発前から嘆いていたのを思い出した。大丈夫か?と聞くとなんとも大丈夫じゃなさそうな返事だった。とりあえずいけるところまで行ってみるとのこと、頑張れアツシ!いつもなら一番強いのは君だ。
 途中で腹が減ったので、それぞれ好きな物を食う。バックカントリーで食うと何でも美味いから不思議だ。食える物は状況によってはなんでも美味しいのだ。腹いっぱいの時に大好物出されても美味しくない。反対に体が究極エネルギーを求めていれば、普段そうでもない物がものすごく美味いのだ。
 メシを食ったらアツシも何とか元気を取り戻した。頂上はもう近い。ひたすら急斜面を登る。一番急なところでも50度はなさそうだ。今回は楽勝か!?
結局、車から約5時間でシュートの頂上につく。
頂上からの長めはサイコーであった。いつも走っているハイウェイがただの線に見える。
 
 とにかく驚いたのはシュートの長さだ。今まで上ばかり見ていたので気が付かなかったが、これはもう、恐ろしい長さである。登ってきたくせに、どこまで続くのだろうか?という疑念まで抱かせるぐらい、長い。これから、ここを降りるかと思うとワクワク、ドキドキである。
 スノーボードを装着すると、まずはカザが、突っ込んだ。シュートの狭いところで一旦とまる。雪は浅い。慎重になったほうがいい。
 カザがそのパートを一気に滑り降りると。
「イエーイ!」
 お決まりの喜びの声がした。
 その後ろを追うようにアツシと僕が突っ込む。雪は軽いパウダー!急制動をかけると目の前は何も見えなくなる。
 シュートの半分ぐらいまで降りると、にわかに雪が少なくなってきた。ソールに岩がガンガン当たりだした。こんな自体は前から予想して居たので僕らは壊してもいいボロボロのスノーボードでやってきていた。岩がソールを叩くのもお構いなしに滑りつづける。
 しかしながら、それも長くは続かなかった。シュートの下部では転倒したらただではすまないほど雪が浅くなってきた。僕らは諦めてスノーボードをはずした。
 トラックを見上げる。滑降後のいつもの儀式だ。しかし、今日のトラックはもちろんシュート直下からは見えなかった。
 すばやく道具をカザのシェビーにしまい込み、頂上から眼下に見えた。ハイウェイのジャンクションに向かった。あそこからなら。シュート全体が見えるはずだ。
 サンシャイン・ジャンクションと呼ばれる。所からシュート「LE CORRIDOR」が見えた。トラックは肉眼では確認できない。ただ、ほんの1時間前には僕らはあの細い溝の中にいたのだ。気が付いた人はまず、いないだろう。大きなロッキーのちっぽけな自分を感じた。

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